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本多孝好のデビュー作でもある短編集。
飛び降り自殺に失敗した男が見ず知らずの少年に助けられ、成り行きで自殺する理由を少年に語りだすところから始まる、小説推理新人賞を受賞した「眠りの森」もミステリーの枠の中で著者らしいどこかファンタジックな余韻を残す良作なのではあるが、持ち味が存分に活きていると思われる本作でのベストはやはり「瑠璃」。
主人公の従兄弟である"瑠璃"の魅力が物語全体を包み込む清廉さを作りだし、安易な青春小説とは一回りも二周りも違う理を見せる。
ミステリー作家でありながら圧倒的な透明感とスマートな表現力で魅せる著者の原点が見えるこの「瑠璃」によって、しばしば本多はミステリ界の村上春樹などと喩えられるようになる。
ミステリー苦手な方にもお薦めしたい。
著者:本多孝好
出版:双葉文庫
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